熱中症の予防と対策③:熱中症を防ぐためには
熱中症の予防と対策シリーズ③:熱中症を防ぐためには。
【熱中症の予防と対策①:熱中症とは】
⇒熱中症とは:じぶんの健康+みんなの健康
【熱中症の予防と対策②:熱中症になったときには】
⇒熱中症になったときには:じぶんの健康+みんなの健康
熱中症とは、私たちの身体が、高温多湿な環境に、適応できないことで生じるさまざまな症状の総称です。
熱中症を引き起こす条件は、「環境」と「からだ」と「行動」によるものが一因とされています。
いつでも、どこでも、誰にでも、条件次第で熱中症にかかる危険性があります。
しかし、正しい予防方法を知り、普段から気をつけることで、
熱中症を防ぐことができると言われています。
熱中症は強い日射しの下で運動や作業をする時だけに起こるものではない、
ということが明らかになっています。
熱中症の正しい知識や対策・対処法を知り、暑い季節を安心安全に過ごしていきましょう。
熱中症 環境保健マニュアル2018 環境省:3.熱中症を防ぐためには<抜粋>
平成25年から7月は「熱中症予防強化月間」に!
熱中症 熱中症は予防が大切!!
*屋外では帽子
*水分をこまめに摂取
*日陰を利用する
*たくさん汗をかいてきたら塩分の補給も忘れずに!!
湿度が高いとき、風がないときは要注意!
ここでは、『熱中症 環境保健マニュアル2018 環境省:3.熱中症を防ぐためには』の概要を掴んでいただけるように抜粋してあります。
詳しい内容については、項目単位でダウンロードできますので、必要に応じて入手して活用することをお薦めします。
出典:環境省 熱中症予防情報サイト
3.熱中症を防ぐためには
-1.日常生活での注意事項
・日時を選んで行動し、涼しく過ごす住まい、衣服を工夫しましょう。
・高齢者の居室では、温湿度を測り、暑さを避け、こまめに水分をとりましょう。
・体調不良、暑いときの無理な運動は事故のもとです。
・暑くなる前から汗をかく運動で暑さに慣れましょう。
・運動、仕事の場面では、お互いに見守りましょう。
・作業開始から3日以内が危険です。
・熱中症発生時の連絡先、対処フローを作りましょう。
熱中症は生命にかかわる病気ですが、予防法を知っていれば防ぐことができます。
日常生活における予防は、脱水と体温の上昇を抑えることが基本です。
体温の上昇を抑えるには、薄着になる、日陰に移動する、水浴びをする、
冷房を使う等、暑さから逃れる行動性の体温調節と、皮膚血管拡張と発汗により熱を体の外に逃がす、自律性の体温調節があります。
しかし、皮膚表面温の上昇には限り(せいぜい35°Cまで)があるため、高温環境では汗による体温調節に対する依存率が高くなり、汗のもととなる体の水分量を維持することが重要になります(周囲の温度が35°C以上になると、逆に熱が体に入ってきます)。
日常生活では、からだ(体調、暑さへの慣れ等)への配慮と行動の工夫(暑さを避ける、活動の強さ、活動の時期と持続時間)、および住まいと衣服の工夫が必要です。
日常生活での注意事項を、以下の6項目にまとめました。
(1)暑さを避けましょう
行動、住まい、衣服の面から、暑さを避ける工夫を整理しました。
・行動の工夫
①暑い日は決して無理しない
②日陰を選んで歩く
③涼しい場所に避難する
④適宜休憩する、頑張らない、無理をしない
⑤天気予報を参考にし、暑い日や時間を避けて外出や行事の日時を検討する
・住まいの工夫(室内で涼しく過ごす工夫)
①風通しを利用する …玄関に網戸、向き合う窓を開ける
②窓から射し込む日光を遮る …ブラインドやすだれを垂らす、緑のカーテン、日射遮断フィルム
③空調設備を利用する …我慢せずに冷房を入れる、扇風機も利用する
④気化熱を利用する …夕方に打ち水をする
⑤外部の熱を断熱する …反射率の高い素材を使った屋根、屋根裏の換気口
・衣服の工夫
衣服で日射の侵入を防ぎ、ゆったりした服装で、衣服の中や体の表面に風をとおし、
体から出る熱と汗をできるだけ早く逃がしましょう。
室内で快適に過ごせる軽装への取組「COOL BIZ(クールビズ)」を実践してください。
①ゆったりした衣服にする
②襟元をゆるめて通気する
③吸汗・速乾素材や軽・涼スーツ等を活用する
④炎天下では、輻射(ふくしゃ)熱を吸収する黒色系の素材を避ける
⑤日傘や帽子を使う(帽子は時々はずして、汗の蒸発を促しましょう)
出典:熱中症を防ぐためには 1.日常生活での注意事項P.29
出典:熱中症を防ぐためには 1.日常生活での注意事項P.29
(2)こまめに水分を補給しましょう
「水分を摂り過ぎると、汗をかき過ぎたり体がバテてしまったりするのでかえってよくない」というのは間違った考え方です。
体温を下げるためには、汗が皮膚表面で蒸発して身体から気化熱を奪うことができるように、しっかりと汗をかくことがとても重要です。
汗の原料は、血液中の水分や塩分ですから、体温調節のためには、汗で失った水分や塩分を適切に補給する必要があります。
暑い日には、知らず知らずにじわじわと汗をかいていますので、身体の活動強度にかかわらずこまめに水分を補給しましょう。
特に、湿度が高い日や風が弱くて皮膚表面に気流が届かない条件の下で、汗をかいても蒸発しにくくなり、汗の量も多くなります。
その分、十分な水分と塩分を補給しましょう。
また、人間は、軽い脱水状態のときにはのどの渇きを感じません。
そこで、のどが渇く前、あるいは暑い場所に行く前から水分を補給しておくことが大切です。
なお、どのような種類の酒であっても、アルコールは尿の量を増やし体内の水分を排泄してしまうため、汗で失われた水分をビール等で補給しようとする考え方は誤りです。
一旦吸収した水分も、それ以上の水分とともに、後に尿で失われてしまいます。
日常生活で摂取する水分のうち、飲料として摂取すべき量(食事等に含まれる水分を除く)は1日あたり1.2ℓが目安とされています(図3-2)。
発汗量に見合った量の水分の摂取が必要です。
また、大量の発汗がある場合は水だけでなく、スポーツ飲料等の塩分濃度0.1~0.2%程度の水分摂取が薦められます。
運動時や労働時に失った水分を十分飲水できない場合が多いので、翌日までに十分な水分摂取が必要です。
なお、入浴時、睡眠時も発汗していますので、起床時や入浴前後は水分を摂取する必要があります。
運動時や作業時に大量の発汗がある場合には、体重減少量(発汗量)の7~8割程度の補給が目安です。
汗の量は、運動や作業の強度と環境温度および着衣量により異なります。
運動・作業の前後の体重差が汗の量になりますので、日ごろから体重を計り、汗の量の目安を確かめておくと良いでしょう。
水分補給のポイント
・こまめに水分補給
・のどが渇く前に水分補給
・アルコール飲料での水分補給は×
・1日あたり1.2ℓの水分補給
・起床時、入浴前後に水分を補給
・大量に汗をかいた時は塩分も忘れずに
出典:熱中症を防ぐためには 日常生活での注意事項 p.31
出典:熱中症を防ぐためには 日常生活での注意事項 p.32
(3)急に暑くなる日に注意しましょう
熱中症は、例年、梅雨入り前の5月頃から発生し、梅雨明けの7月下旬から8月上旬に多発する傾向がありま
す。(図2-3)人間が上手に発汗できるようになるには、暑さへの慣れが必要です。
暑い環境での運動や作業を始めてから3~4日経つと、汗をかくための自律神経の反応が速くなって、体温上昇を防ぐのが上手になってきます。
さらに、3~4週間経つと、汗に無駄な塩分をださないようになり、熱けいれんや塩分欠乏によるその他の症状が生じるのを防ぎます。
このようなことから、急に暑くなった日に屋外で過ごした人や、久しぶりに暑い環境で活動した人、涼しい地域から暑い地域へ旅行した人は、暑さに慣れていないため熱中症になりやすいのです。
暑いときには無理をせず、徐々に暑さに慣れるように工夫しましょう。
出典:熱中症を防ぐためには 日常生活での注意事項 p.33
(4)暑さに備えた体作りをしましょう
熱中症は梅雨の合間に突然気温が上がった日や、梅雨明け後に急に蒸し暑くなった日にもよく起こります。
このようなとき、体はまだ暑さに慣れていないので、熱中症が起こりやすいのです。
暑い日が続くと、体がしだいに暑さに慣れて(暑熱順化)、暑さに強くなります。
この慣れは、発汗量や皮膚血流量の増加、汗に含まれる塩分濃度の低下、血液量の増加、心拍数の減少等として現れますが、こうした暑さに対する体の適応は気候の変化より遅れて起こります。
暑熱順化は「やや暑い環境」において「ややきつい」と感じる強度で、毎日30分程度の運動(ウォーキング等)を継続することで獲得できます。
実験的には暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程度で完成するといわれています。
そのため、日頃からウォーキング等で汗をかく習慣を身につけて暑熱順化していれば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。
じっとしていれば、汗をかかないような季節からでも、少し早足でウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば、夏の暑さに負けない体をより早く準備できることになります。
また生活習慣病の予防効果も期待できます。
(5)各人の体力や体調を考慮しましょう
熱中症の発生には、その日の体調が影響します。
暑さに対して最も重要な働きをする汗は、血液中の水分と塩分から作られます。
脱水状態や食事抜きといった万全ではない体調のまま暑い環境に行くことは、絶対に避けなければなりません。
風邪等で発熱したり、下痢になったりしている場合は脱水状態と言えます。
また深酒をして二日酔いの人も脱水状態であり、非常に危険です。
体調が回復して、食事や水分摂取が十分にできるまでは、暑いところでの活動は控えなければなりません。
また、活動の後には体温を効果的に下げるように工夫します。
そのためには、十分な水分補給(大量に汗をかいた場合は塩分も補給)とよい睡眠を取り、涼しい環境でなるべく安静に過ごすことが大切です。
肥満の人、小児や高齢の人、心肺機能や腎機能が低下している人、自律神経や循環機能に影響を与える薬物を飲んでいる人も、熱中症に陥りやすいので活動強度に注意しましょう。
出典:熱中症を防ぐためには 1.日常生活での注意事項 p.34
(6)集団活動の場ではお互いに注意しましょう
中症の予防には、個人ごとの努力とともに集団生活におけるお互いの配慮や注意も必要です。
まず、暑さが避けられない場所での運動や作業は、なるべく短時間で済ませるようにします。
責任者は、集団活動のスケジュールを工夫したり、暑さや身体活動強度に合わせてこまめに休憩を入れたり、選手や作業者を交代させて一人あたりの活動時間を短くしたりします。
暑い場所での集団活動で忘れてはならないものは、個人の体力や体調に合わせたペースを守らせ、無理をさせないことです。
そして、水分と塩分(ナトリウム等)をいつでも補給できるように飲料を準備します。
のどの渇きの感覚に頼っているといずれも不足してしまいますから、活動を始める前から補給するよう指導するのがポイントです。
また、水分だけを補給していると血液中の塩分濃度が低下して、塩分欠乏によって筋けいれんなどの症状が生じることがあります。
特に、たくさん汗をかくような状況では塩分も補給するよう注意します。
活動のスケジュールには、水分補給のための休憩を計画します。
出典:熱中症を防ぐためには 1.日常生活での注意事項 p.34
毎年、集団活動で管理が要求される分野では、熱中症が多く発生し始める6月よりも前に、熱中症についての予防や対策について責任者を対象に周知することが大切です。
さらに、いざというときに救急搬送できる医療機関を調べておきましょう。実際に、患者を医療機関で受診させる際は、運動や仕事の様子を説明できる人が同行するようにしましょう(23,26頁参照)。
-2.高齢者と子どもの注意事項
近年、快適環境の追及に伴い、人間の体温調節能力が脆弱化していることが懸念されています。
この脆弱化に高齢化、さらには地球温暖化やヒートアイランド現象が加わり、新たな「災害」とまでいわれる熱中症が急増しています。
猛暑にみまわれた2010年には1,745人が熱中症で死亡し(図1-9、図1-10)、その80%が65歳以上の高齢者でした。
また、熱中症による子どもの死亡者数は減少していますが(図1-10)、その発生率は高いことが知られています(図2-5)。
このような状況下では熱中症のハイリスクグループともいえる高齢者と子どもの体温調節能力や日常生活下の温熱特性を理解し、年齢に応じた熱中症予防策が必要となります。
(1)高齢者の特徴
① 行動性体温調節の鈍化
図3-3に示すように、人間が暑さにさらされ、皮膚に存在する温度センサーが暑さを感知すると、その情報は脳の視床下部にある体温調節中枢に伝えられます。
その情報に深部からの温度情報も加えて体温調節中枢が「暑い」と判断すると、皮膚血管や汗腺に命令を出し、皮膚血流量や発汗量を増やします(自律性体温調節)。
さらに冷房の利用や衣服の調節等といった行動性体温調節も作動し、暑さを和らげようとします。
夏季(7月から9月の間)の高齢者(70歳以上)の居室では、若年者より室温が2℃ほど高く(31-32℃に達している)、相対湿度が約5%高い高温多湿の環境(就寝時を除く)で生活していることが報告されています。
これは高齢者の冷房使用時間が短く、使用する際でも設定温度が高いことに起因しています。
この高齢者の特徴的な冷房の使い方は、体の冷えを嫌がったり、節電意識を理由として挙げる人もいますが、老化に伴い皮膚の温度センサーの感度が鈍くなり、暑さを感知しにくくなるのも一因です。
皮膚の温度センサーが鈍くなると、自律性体温調節の発動も遅れてきます。
この行動性と自律性の体温調節の鈍化により、体に熱がたまり、熱中症の発生へと繋がります。
このことから、高齢者の部屋に「温湿度計」を置き、周囲の方も協力して、室内温度をこまめにチェックし、暑い日には冷房を積極的に使用して室温をほぼ28℃前後に保つようにしましょう。
出典:熱中症を防ぐためには 2.高齢者と子どもの注意事項 P.37
② 熱放散能力の低下
体温調節中枢が暑いと判断すると、自律性体温調節として皮膚血流量や発汗量を増加して熱放散を促進します。
老化が進むと皮膚血流量と発汗量の増加が遅れ、その後の体温の上昇に伴う増加の程度も小さくなります。
そのため、高齢者は若年者より熱放散能力が低く、体に熱がたまりやすくなり、深部体温がより上昇しやすくなります。
発汗能力の低下は下肢→体幹後面→体幹前面→上肢→頭部と進行することが明らかにされています。
また、汗腺それ自体およびその周辺の老化がかなり進行すると、汗腺自体に老化の進行が遅い部位(前額)の発汗量がよ
り増加します。
老化に伴う熱放散反応の低下が頭部で他の身体部位より遅れることは、重要な器官である脳の温度上昇を抑制するために理にかなった適応現象と考えられます。
暑くなると、皮膚への血流量が増加するため、心臓にもどってくる血液量が減少します。
それを補うために心拍数が増加し循環系への負担が大きくなります。
このような状態になると、循環器系に基礎疾患がある、または疾患はなくとも機能的に低下している高齢者は、熱中症にかかりやすくなります。
このことにも十分留意する必要性があります。
③体液量の低下
高齢者は若年者より体液量および血液量が少ないことも知られ(図3-1参照)、この減少も老化に伴う熱放散反応の低下につながります。
高齢者が若年者と同程度に発汗した場合、脱水状態に陥りやすく、回復しにくいことも報告されており、これは高齢者がのどの渇きを感じにくいことや、腎機能が低下していることに起因しています。
一般に脱水が進むと、のどの渇きが起こり、自然に飲水行動をとります。
しかし、高齢者は脱水が進んでも、のどの渇きが起こりにくくなっています。
これは脳での察知能力が低下するために起こるようです。
そのため、発汗する機会が多くなる夏には、高齢者はのどの渇きが起こらなくても、早め早めにこまめな水分補給を行いましょう。
出典:熱中症を防ぐためには 2.高齢者と子どもの注意事項 P.38
④体温調節能力の改善
日常的に運動して若年者と同等の体力レベルをもつ高齢者では、若年者に劣らない暑さに対する耐性(若年者と同等の発汗能力等)を持っていることが明らかにされています。
このことは、高齢になっても日常的な運動習慣を身につければ、体温調節能力の老化を遅らせることができることを示しています。
近年、運動直後30分以内に糖質とタンパク質を含んだ食品(例えば牛乳1 ~ 2杯)を補給することで、血液量を増加し、熱放散能力を改善することが報告されています。
1日1回汗をかく運動をして、体力作りすることをお勧めします。
(2)子どもの特徴
①熱放散能力の未発達さ
思春期前の子どもは汗腺をはじめとした体温調節能力がまだ十分に発達していないために、高齢者と同様に熱中症のリスクが高くなります。
温熱ストレスが増大すると、子どもは皮膚血流量(頭や躯幹部)を著しく増加させて、未発達な汗腺能力を補う熱放散特性を示します(図3-4)。
熱放散反応は体格にも影響され、子どもは大人より大きな「体表面積(熱放散するところ)/体重(熱産生するところ)」比を有することから、熱しやすく冷めやすい体格特性を持っています。
気温が皮膚温より低い場合には、この皮膚血流量の増加と冷めやすい体格特性とがあいまって、深部体温を若年成人とほぼ同様に調節することができます。
しかし、汗が唯一の熱放散手段となる環境温が皮膚温より高い条件や輻射(ふくしゃ)熱の大きな条件(夏季の炎天下)では、熱しやすい体格特性が熱獲得を促進するとともに、未発達な発汗能力が大きく影響し、子どもの深部体温は大人より大きく上昇し、熱中症のリスクが急増します。
高温環境下の子どもでは、熱失神がよく観察されます。これは子どもの熱放散特性(過度な皮膚血管の拡張)と未発達な血圧調節に起因するようです。
②水分補給
子どもでものどの渇きが大人と同等に起こるので、スポーツ活動時でも発汗量に見合った水分を補給することができます。
そのため、のどの渇きに応じて自由飲水ができるように指導し、その能力を磨くようにしましょう。
ただし、多量の発汗を伴うスポーツ活動時には自由飲水に慣れるまでは、状況に応じて水分補給タイムを設けて適切な水分補給を指導するようにしてください。
③肥満の影響
学校管理下で発生した熱中症死亡事故では、肥満が大きな要因であることが指摘されています。
このことは、夏季の子どものスポーツ活動時において、肥満度が高い者ほど深部体温が高くなることからも裏づけられています。
そのため、肥満傾向の子どもほど、暑熱下長時間運動に対して弱者的立場にあることを保護者や指導者は十分に留意して、夏季のスポーツ活動を計画しましょう。
出典:熱中症を防ぐためには 2.高齢者と子どもの注意事項 P.40
出典:熱中症を防ぐためには 2.高齢者と子どもの注意事項 P.41
コラム 自然災害と熱中症 ※タイトルのみ記載
-3.運動・スポーツ活動時の注意事項
スポーツ活動では筋肉で大量の熱が発生するため、それだけ熱中症の危険が高くなります。
激しい運動では、短時間でも、またそれほど気温が高くない場合でも熱中症が発生しています。
暑い中ではトレーニングの質が低下するため、無理にトレーニングしても効果は上がりません。
したがって、熱中症を予防するトレーニング方法や水分補給等を心がけることが、事故予防という観点だけでなく、効果的なトレーニングという点からも重要です。
スポーツ活動には、個人で行うものと集団で行うものがあります。
個人で行う場合は、状況に合わせて自分で活動を調節できますが、集団でスポーツ活動を行う場合には、指導者やリーダーが熱中症を理解し、予防の配慮をする必要があります。
(1)運動時における熱中症
スポーツ活動による熱中症をみると、暑くなり始めの7月下旬と8月上旬に多く発生しています。
熱中症発生時の環境条件(気温と湿度)を発生地最寄りの気象台のデータで解析した結果をみると、多くの場合、気温は21 ~ 38℃の広い範囲に分布しており、湿度が高ければ気温がそれほど高くなくても発生していることが分かります(図3-7)。
時間帯では10 ~ 18時に多く発生していますが、10時以前、18時以降に発生した例もあります。
また、運動開始から熱中症発生までの時間は必ずしも長時間とは限らず、激しい運動では、 30分で発生した例もあります。
また、6月の事例は7月の事例よりも低温で発生しています。これは6月にはまだ体が暑さに慣れていないために比較的低温でも熱中症が発生することを示しています。
学校管理下では、中学校・高校の1・2年の発生が多く(図3-9)、種目別では、野球、ラグビー、サッカー等屋外で走ることの多い競技、屋内競技の剣道、柔道等の競技で多く発生しています。
また『直前行動別』でみると、ランニング・ダッシュ等「走る運動」で発生している例が最も多く、次に多いのが、体力強化や競技技術向上のための練習中に発生しています。
暑さ指数(WBGT)で分布を示すと(図3-8)、暑さ指数(WBGT)22℃以上で熱中症事例のほとんどが発生しており、28℃以上になると発生数が特に多くなります。
暑さ指数(WBGT)22℃以下で発生した例で、*1はレスリングの無理な減量に伴う例、* 2は野球練習後にシャトルランを繰り返した例です。
これらは無理な運動が原因ですが、*3は4月に実施された高校校内マラソン大会(5km)での発生で、暑さに慣れてないことが関係しています。
この分布がスポーツ活動時の予防指針の温度区分の基準となりました(表3-1)。
スポーツ活動による熱中症は、適切な予防措置により妨げるものです。
熱中症の発生には、環境の条件、運動の条件、個人のコンディションが関係しており、次のような対策が必要です。
日本体育協会では、熱中症予防のための目安として運動指針を示しています(表3-1)。
(2)運動時の対策
スポーツ活動による熱中症は、適切な予防措置により妨げるものです。
熱中症の発生には、環境の条件、運動の条件、個人のコンディションが関係しており、次のような対策が必要です。
① 環境条件を把握しておきましょう
環境条件の指標は気温、気流、湿度、輻射(ふくしゃ)熱を合わせた暑さ指数(WBGT)が望ましいですが、気温が比較的低い場合には湿球温度を、気温が比較的高い場合には乾球温度(気温)を参考にしても結構です。
日本体育協会では、熱中症予防のための目安として運動指針を示しています(表3-1)。
出典:熱中症を防ぐためには 3.運動・スポーツ活動時の注意事項 P.45
② 状況に応じた水分補給を行いましょう
暑い時は水分をこまめに補給します。
休憩は30分に1回以上程度とるようにします。
日常生活において、最適の水分摂取量を決定する最も良い方法は、運動の前と後に体重を測ることです。
運動前後で体重が減少した場合、水分喪失による体重減少と考えられますので、同量程度の水を飲んで体内の水分量を調節することが必要です。
長時間の運動で汗をたくさんかく場合には、塩分の補給も必要です。
0.1 ~ 0.2%程度の食塩水(1ℓの水に1 ~ 2gの食塩)が適当です(飲料の場合、ナトリウム量は100mlあたり40 ~ 80mgが適当)。
運動中の水分補給に冷たい水が良い理由は2つあります。
1つは、冷たい水は深部体温を下げる効果があるからで、も
う1つは、胃にとどまる時間が短く、水を吸収する器官であ
る小腸に速やかに移動するからです。
出典:熱中症を防ぐためには 3.運動・スポーツ活動時の注意事項 p.45
③ 暑さに徐々に慣れる
熱中症は急に暑くなる7月下旬から8月上旬に集中しています。
また夏以外でも、急に暑くなると熱中症が発生します。
これは体が暑さに慣れていないためで、急に暑くなった時は運動を軽くして、徐々に慣らしていきます。
④ 個人の条件や体調を考慮する
体力のない人、肥満の人、暑さに慣れていない人は熱中症を起こしやすいので、運動を軽減します。
特に肥満の人は、熱中症を起こしやすいので注意が必要です。
また、 下痢・発熱・疲労等体調の悪いときは熱中症を起こしやすいので、無理をしないことです。
⑤ 服装に気をつける
服装は軽装とし、透湿性や通気性のよい素材にします。
また、直射日光は帽子で防ぐようにしましょう。
運動時に使用する保護具等は休憩時には緩めるか、はずす等して、体の熱を逃がすようにしましょう。
⑥ 具合が悪くなった場合には早めに措置をとる
暑いときは熱中症が起こり得ることを認識し、具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止して、必要な処置をとるようにしましょう。
⑦ 無理な運動はしない
環境条件、体調に応じた運動量(強度と時間)にしましょう。強制的な運動は厳禁です。
コラム 市民マラソンにおける熱中症※タイトルのみ記載
コラム 低ナトリウム血症※タイトルのみ記載
コラム オリンピックと熱中症※タイトルのみ記載
-4.夏季イベントにおける熱中症対策
イベントの実施に当たっては、責任者を決めたうえで、傷病者の発生や災害に備えたマニュアルを作成し、参加者全員が共通の認識の下で活動できる等の対応が必要ですが、夏季の場合は熱中症の対策として、「発生を防ぐ対応」と「発生後の対応」の、異なる2種類の対応が必要となります。
どれだけ熱中症の発生を防ぐ対応をとっていても、熱中症患者をゼロにすることは非常に困難であることから、発生後に適切な対応がとれる体制を作ることが特に重要です。
夏季のイベントでは、
(1)会場に医療救護所を設置、医師を配置し、可能な限り現場で初期治療と医療機関で治療が必要かどうかの判断を行い、本当に必要な患者だけを搬送する体制をとっている場合と、
(2)傷病者が発生した場合、担当スタッフからの連絡を受け救命士等が出動・判断し、救急車を要請する場合があります。
この節では、熱中症患者等への対応のための、(1)医療体制等運営上の工夫及び(2)危機管理体制の工夫について、また、発生を防ぐために(3)暑熱環境の把握とその緩和について、まとめました。
※以下、目次を掲載します。詳細はダウンロードして参考にすることをお薦めします。
(1)医療体制など運営上の工夫
1)傷病者発生時のマニュアル
2)救護所の設置
コラム 救護所の開設による改善事例
(2) 危機管理体制の工夫
1)緊急対応フロー・連絡シート
2)連絡先一覧(フローを含む)
3)連絡シート・広報文の作成
・傷病者発生時の対応フロー
図3-13 緊急対応フロー(傷病者発生時)
図3-14 連絡先一覧
(3) 暑熱環境の把握とその緩和
1)運営上の工夫
a.待機列を作らない工夫と日陰への誘導
b. 開場時の混雑緩和の工夫
c. 終了時の混雑緩和に配慮
d. 施設等のわかりやすい表示
e. 休憩場所、飲料の確保
図3-15 イベント会場における暑熱環境の緩和
イベントを実施するにあたっての4つのチェック項目
① イベントの実施体制(システム)をチェックしましょう
② イベントの対応フローがちゃんと流れるかチェックしましょう
③ イベントの規模と対応スタッフの数を確認しましょう
④ イベントの安全目標を確認しましょう
コラム 熱波とマスギャザリングイベント
-5.労働環境での注意事項
※以下、目次を掲載します。詳細はダウンロードして参考にすることをお薦めします。
(1)職場における熱中症の特徴
① 熱中症を生じやすい職場
② 作業環境や作業の注意事項
③ 体調や健康状態の注意事項
図3-16 労働災害における熱中症による死亡者数と死傷者数(休業4日以上)の推移
図3-17 労働災害における熱中症による死亡者数、発生時刻
図3-18 労働災害における熱中症による死亡者数、年代別
図3-19 労働災害における熱中症による死亡者数、業種別
図3-20 労働災害における熱中症による死亡者数、作業開始からの経過日数
図3-21 労働災害における熱中症による死亡者数、地域別
(2)職場における熱中症の予防について
熱中症予防対策の準備(主に4月以前)
熱中症予防対策(主に5月~9月)
参考:「職場における熱中症予防対策」
( http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html)
コラム 職場における熱中症が発生するメカニズム
熱中症を防ぐためには:じぶんの健康+みんなの健康|GNH358
(熱中症の予防と対策③:健康・食事豆知識)
出典:環境省 熱中症予防情報サイト
初稿:2018年7月1日
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