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熱中症とは:じぶんの健康+みんなの健康

熱中症の予防と対策①:熱中症とは

熱中症とは、
私たちの身体が、高温多湿な環境に適応できないことで生じるさまざまな症状の総称。
熱中症を引き起こす条件は、
「環境」と「からだ」と「行動」によるものが一因とされています。

いつでも、どこでも、だれにでも、条件次第で熱中症にかかる危険性がありますが、
正しい予防方法を知り、普段から気をつけることで、
熱中症を防ぐことができると言われています。

勘違いされがちですが、
熱中症は強い日射しの下で運動や作業をする時だけに起こるものではない、
ということが明らかになっています。

熱中症の正しい知識や対策・対処法を知り、暑い季節を安心安全に過ごしていきましょう。

熱中症 環境保健マニュアル2018 環境省:1.熱中症とは何か<抜粋>

平成25年から7月は「熱中症予防強化月間」に!

「熱中症 環境保健マニュアル2018」が環境省から発行されています。

熱中症 熱中症は予防が大切!!
このような症状があれば・・・

重症度は、Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度があります。

ここでは、『熱中症 環境保健マニュアル2018 環境省:1..熱中症とは何か』から抜粋して、概要を掴んでいただけるようにしてあります。
項目単位でダウンロードできますので、必要に応じて入手してください。
出典:環境省 熱中症予防情報サイト

1.熱中症とは何か

-1.熱中症とは何か

熱中症は・・・
・体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の
流れが滞るなどして、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発
祥する障害の総称です。高温環境下に長期間いたとき、あるいはいた後の体調不良はすべ
て熱中症の可能性があります。
・死に至る可能性のある病態です。
・予防法を知って、それを実践することで、完全に防ぐことができます。
・応急処置を知っていれば、重症化を回避し後遺症を軽減できます。

人は環境によって体温が変動するカエルや魚などの変温動物とは違って、37℃前後の狭い範囲に体の温度を調節している恒温動物です。
体内では生命を維持するために多くの営みがなされていますが、そのような代謝や酵素の働きからみて、この温度が最適の活動条件なのです。

私たちの体では、運動や体の営みによって常に熱が産生されるので、暑熱環境下でも、異常な体温上昇を抑えるための、効率的な体温調節機構も備わっています(図1-1の上)。

暑い時には、自律神経を介して末梢血管が拡張します。
そのため皮膚に多くの血液が分布し、外気への放熱により体温低下を図ることができます。

また汗をたくさんかけば、「汗の蒸発」に伴って熱が奪われる(気化熱)ことから体温の低下に役立ちます。
汗は体にある水分を原料にして皮膚の表面に分泌されます。このメカニズムも自律神経の働きによります。

このように私たちの体内で本来必要な重要臓器への血流が皮膚表面へ移動し、また大量に汗をかくことで体から水分や塩分(ナトリウムなど)が失われるなどの脱水状態に対して、体が適切に対処できなければ、筋肉のこむら返りや失神(いわゆる脳貧血:脳への血流が一時的に滞る現象)を起こします。
そして、熱の産生と熱の放散とのバランスが崩れてしまえば、体温が急激に上昇します。
このような状態が熱中症です(図1-1の下)。

熱中症は死に至る恐れのある病態ですが、適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。
また、適切な応急処置により重症化を回避し後遺症を軽減することもできます。
しかし、わが国における熱中症の現状をみると、熱中症の知識の普及は進んでいますがまだ十分に普及しているとはいえないでしょう。

-2.熱中症はどのようにして起こるのか


出典:熱中症とは何か 2.熱中症はどのようにして起こるのか p.3

体内に溜まった熱を対外に逃がす方法(熱放散)には、皮膚の表面から直接熱を外気に逃がす放射や液体や固体に移す伝導、風によってその効率を上げる対流等があります。
しかし、外気温が高くなると熱を逃がしにくくなります。汗は蒸発する時に体から熱を奪います。
高温時は熱放散が小さくなり、主に汗の蒸発による気化熱が体温を下げる働きをしています。
汗をかくと水分や塩分が不足し、血液の流れが悪くなるので、適切な水分・塩分の補給が重要になってきます。

どのような場所でなりやすいか(環境)
高温、多湿、風が弱い、輻射源(熱を発生するもの)がある等の環境では、体から外気への熱放散が減少し、
汗の蒸発も不十分となり、熱中症が発生しやすくなります。

<具体例>
工事現場、運動場、体育館、一般の家庭の風呂場、気密性の高いビルやマンションの最上階等

熱中症を引き起こす条件
<環境>
・気温が高い
・湿度が高い
・風が弱い
・日差しが強い
・閉め切った室内
・エアコンがない
・急に暑くなった日
・熱波の襲来
⇒熱中症を引き起こす可能性

<からだ>
・高齢者、乳幼児、肥満
・からだに障害のある人
・持病(糖尿病、心臓病、精神疾患等)
・低栄養状態
・脱水状態(下痢、インフルエンザ等)
・体調不良(二日酔い、寝不足等)
⇒熱中症を引き起こす可能性

<行動>
・激しい運動
・慣れない運動
・長時間の屋外作業
・水分補給がしにくい
⇒熱中症を引き起こす可能性

どのような人がなりやすいか(からだ・行動)
・脱水状態にある人
・高齢者、乳幼児
・からだに障害のある人
・肥満の人
・過度の衣服を着ている人
・普段から運動をしていない人
・暑さに慣れていない人
・病気の人、体調の悪い人

出典:熱中症とは何か 2.熱中症はどのようにして起こるのか p.4

病態からみた熱中症
熱中症の発症には、環境(気温、湿度、輻射(ふくしゃ)熱、気流等)及び行動(活動強度、持続時間、休憩等)とからだ(体調、性別、年齢、暑熱順化の程度等)の条件が複雑に関係します。
熱中症の重症度・緊急度から見れば熱中症[heat illness]はI度、II度、III度に分類されますが(口絵)、病態(症状)から見た分類もあります(図1-4)。
暑いところで体温が上昇すると、放熱のために皮膚血管を拡張して皮膚への血流量を増やし皮膚温を上昇させます。
立ったままの姿勢を持続していると血液が下肢にたまり、脳への血流が減少するため、一過性の意識消失(失神発作)いわゆる熱失神[heat syncope]をおこします。
また、暑いところでたくさん汗をかいた時には水分だけでなく電解質も喪失しますので、真水や塩分濃度の低い飲料を補給すると、血液中の塩分濃度が低下し痛みを伴う筋肉のけいれん(熱けいれん[heat cramps])が起きます。
さらに、血液が皮膚表面に貯留することに加えて、仕事や運動のために筋肉への血液の供給が増え、心臓に戻る血液が少なくなり、心拍出量の減少で 循環血液量が減少し、重要臓器(脳等)および内臓への血流が減少する
ことにより、めまい、頭痛、吐き気等の全身性の症状をともなうことがあります。
これが、高度の脱水と循環不全により生じる熱疲労[heat exhaustion]です。
体温は正常もしくは少し上昇しますが、40°Cを超えることはありません。軽度の錯乱等がみられることはありますが、昏睡等の高度な意識障害はみられません。
熱疲労が中核的病態ですが、脱水と循環不全がさらに増悪すると、発汗と皮膚血管拡張ができなくなり、体温が過度(40°C以上)に上昇し、脳を含む重要臓器の機能に障害が起き、体温調節不全、意識障害に至る熱射病[heat stroke]になります。
この場合、意識障害は診断に重要で、重症の昏睡だけではなく、応答が鈍い(自分の名前が言えない等)、何となく言動がおかしい、日時や場所がわからない等の軽いものもあるので注意が必要です。
一旦、熱射病を発症すると、迅速適切な救急救命処置を行っても救命できないことがあるため、熱疲労から熱射病への進展を予防することが重要です。
仕事や運動時には条件(活動強度、体調、衣服、高温等)によって短時間で発症することがありますので注意が必要です。
熱中症を4つの病態に分けて説明しましたが、実際の例ではこれらの病態が明確に分かれるわけではなく、脱水、塩分の不足、循環不全、体温上昇等がさまざまな程度に組み合わさっていると考えられます。
したがって、救急処置は病態によって判断するよりI度~III度の重症度に応じて対処するのが良いでしょう。


出典:熱中症とは何か 2.熱中症はどのようにして起こるのか p.5

-3.熱中症はどれくらい起こっているのか

我が国で報告されている熱中症に関する統計には、以下のものがあります。
総務省消防庁では救急搬送者のうち熱中症による搬送者を2008年から週1回(原則火曜日)
速報として、年齢別、重症度別(軽症、中等症、重症、死亡)に報告しており、熱中症の注意
喚起の目安等に利用されています。
また、厚生労働省が管轄する診療報酬明細書(医療機関から発行されるいわゆるレセプト)が、
翌年夏前以降に集計され、熱中症患者数を把握することができ、医師の診療後の確定診断を反映
するので精度が高いものといえます。
加えて、厚生労働省が翌年度に発表する人口動態統計で、原因別の死亡数が報告されており、
1968年以降の長期的な熱中症の変化傾向等に利用することが可能です。
総務省消防庁報告データによると、全国で6月から9月の期間に、熱中症で救急搬送された方は、
暑い夏となった2010年は56,119人、2013年は58,729人で、年齢層別では65歳以上の高齢者が最も
多く、2013~ 2017年は全体の46 ~ 50%で推移しています(図1- 5)。


出典:熱中症とは何か 3.熱中症はどれくらい起こっているのか p.6


出典:熱中症とは何か 3.熱中症はどれくらい起こっているのか p.6

また、図1-6に、東京都および主な政令指定都市等の2000年から2015年までの救急搬送された熱中症患者数を示しました。
熱中症患者の発生は、高温の日数が多い年や異常に高い気温の日が出現すると発生が増加すること、ここ数年、特に2010年以降、大きく増加していることがわかります。

以下、各図を紹介しておきます。


出典:熱中症とは何か 3.熱中症はどれくらい起こっているのか p.7


出典:熱中症とは何か 3.熱中症はどれくらい起こっているのか p.8

-4熱中症と気象条件

真夏日は最高気温が30℃以上の日を指しますが、1年間の真夏日の日数が多くなると、
熱中症死亡数も多くなります(図1-11)。
また、図1-12は、熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上の日)の日数と熱中症死亡数の関係
を示したもので、やはり、熱帯夜の日数が多い年ほど熱中症死亡数が多くなります。

図1-13の左図は東京23区、名古屋、大阪及び福岡の日最高気温別・熱中症死亡率を示したものです。
横軸は日最高気温、縦軸はそれぞれの日最高気温1日当たりの熱中症死亡率(人口10万人当たり)を示しています。
日最高気温が30℃を超えるあたりから、熱中症による死亡が増え始め、その後気温が高くなるに従って死亡率が急激に上昇する様子が見られます。

図1-13の右図は同様の関係を日最高暑さ指数(WBGT)※について示したものです。
日最高気温の場合以上に、熱中症死亡率との相関関係がはっきりしており、日最高暑さ指数(WBGT)が28度を超えるあたりから熱中症による死亡が増え始め、その後暑さ指数(WBGT)が高くなるに従って死亡率が急激に上昇する様子が見られます


※暑さ指数(WBGT)は、環境条件としての気温、気流、湿度、輻射熱の4要素の組み合わせに
よる温熱環境を総合的に評価した指標である
出典:熱中症とは何か 4.熱中症と気象条件 p.9

コラム:ヒートアイランド現象※タイトル記載
図1-14 東京の夏季の熱帯夜、真夏日、猛暑日日数の変化(1965~2017年)
図1-15 東京首都圏での夏季(2010年7月1日~8月31日平均)の朝と午後の気温分布
出典:熱中症とは何か 4.熱中症と気象条件 p.10

コラム:地球温暖化とその影響※タイトル記載
図1-16 日本の真夏日日数の変化
出典:熱中症とは何か 4.熱中症と気象条件 p.11

-5暑熱環境と暑さ指数

我が国の暑熱環境について
○年々厳しくなる暑熱環境
日本の夏は暖かく湿った空気を持つ太平洋高気圧に支配されており、気温が高いだけではなく、湿度が高く蒸し暑いのが特徴です。
熱中症は気温だけではなく、湿度も大きく影響することから、蒸し暑い日本では、夏季の気温上昇が進むとともに、熱中症患者の急激な増加が、近年大きな問題となっています。
日本の夏季(6月から8月)の平均気温は、100年で約1.5℃上昇していますが、特に都心部ではヒートアイランドの影響等により上昇度が大きく、東京は、同じ期間で約3℃上昇しています( 図1-17)。


出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.12

〇 欧米に比べて蒸し暑い夏
日本の夏は、気温も湿度も高く蒸し暑いことが特徴です。
夏季に来訪する外国からの旅行者にとっては、厳しい暑熱環境になっていると予想されます。
図1-18は外国からの旅行者等が、日本の夏の気温・湿度の高さについてどう感じたかを、成田国際空港・東京国際空港の出発カウンターの帰国者および、留学生等に聞き取り調査した結果です(空港調査:2016年8月上旬実施)。
気温、湿度を「快適」から「極めて暑い(極めて湿潤)」までの5段階に分け、日本と自国(居住地)のそれぞれについて選択してもらい、その差を地域別にまとめました。
特に欧州からの旅行客は日本の夏が厳しいと感じており、米国や中近東の方々も暑さはそれほどでなくても、湿度が高いと感じています。
夏季に訪日するにあたっては、暑熱順化に十分取り組むよう訴求する必要があります。


出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.12

暑熱環境と暑さ指数

熱中症を引き起こす条件として「環境」は重要ですが、我が国の夏のように蒸し暑い状態では、気温だけでは暑さは評価できません。
熱中症に関連する、気温、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)、風の要素を積極的に取り入れた指標として、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)があり、特に 高温環境の指標として労働や運動時の予防措置に用いられています。
暑さ指数を用いた指針としては、日本体育協会による「熱中症予防運動指針」、日本生気象学会による「日常生活における熱中症予防指針」があり、暑さ指数に応じて表1-1に示す注意事項が示されています。
日本においては、気温や湿度等は気象庁が観測を行っており、これらの指針の策定にあたっても、気象庁の観測データが利用されました。
このことから暑さ指数は、気象庁観測要素を用いて計算され、夏期には、全国約840地点の暑さ指数の実況値や予測値が「環境省熱中症予防情報サイト」(http://www.wbgt.env.go.jp/)で公開されています。
また、市民マラソンにおける指針については、Hughson(カナダ)による指針が提案され(表3-2、47頁)、アメリカやカナダで用いられています。


(注1) 日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3」(2013)より
(注2) 日本体育協会「熱中症予防のための運動指針」(2013)より

出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.13

-6暑さ指数(WBGT):熱中症予防のための指標

暑さ指数(WBGT)

暑さ指数(WBGT)は、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標です。
労働や運動時の熱中症予防に用いられています(13頁参照)。


出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.14

WBGTは熱ストレスの評価指標としてISO7243で国際的に規格化されており、図1-19(左)に示す測定装置で計測します。
この測定方法では、乾湿球温度計は自然気流にさらし、乾球温度計は日射の影響を受けないよう、日射を遮るカバーを付けます。
また、湿球温度の測定のため、水の取り扱いが必要です。
より簡単にWBGTを計測できるように、電子式の装置が市販されています。
図1-19(右)の様に固定設置して、周囲から見えるようにWBGTを表示、データ取得をするものや、個人が持ち歩いて周辺のごく近い場所のWBGTを計測できる小型のものがあります。


出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.14

熱中症予防情報

環境省では、熱中症を未然に防止するため、「環境省熱中症予防情報サイト」を運用し、全国約840 地点における暑さ指数(WBGT) の実況値・予測値等、熱中症予防情報の提供を行っています。
・実況値:現在の暑さ指数(WBGT)
・予測値:今日・明日・明後日(深夜0時まで)の3時間毎の暑さ指数(WBGT)

〇環境省熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)


出典:熱中症とは何か 5.暑熱環境と暑さ指数 p.15

『熱中症とは何か:じぶんの健康+みんなの健康|GNH358』
(熱中症の予防と対策①:熱中症とは何か)
出典:環境省 熱中症予防情報サイト
初稿:2018年7月1日

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